教育事情1

下村博文文部科学大臣のお話です。(『致知』より引用しました)

私の経験を少しお話ししますと、29613_611356178907933_1592908980_n 実はもう1人、
私に本当の意味で
教育のあるべき姿を
教えてくれた人がいるんです。
それが私の長男です。

長男は高い競争率をくぐり抜けて
国立の附属小学校に合格し、
我が息子ながら優秀でした。
ところが小学校4年生の頃でしょうか、
なかなか漢字を
覚えないことが分かったんです。

私はその頃、
国会議員でしたけれども
毎日夜は早く帰って
マンツーマンで子供に教えました。

ある漢字を教えて1時間くらい経って
書かせてみると書けない。
怠けているんじゃないか、
舐めているんじゃないかと思って、
それが最初で最後でしたけれども、
私は子供を殴ったんですね。

手のひらの痛みは
いまも覚えていますし、
それ以上に心の痛みが残っています。
その時、長男は反抗するどころか、
下を向いてポロポロ
涙を流していましたよ。

彼は知能指数は平均以上だったし
特に芸術分野はずば抜けていました。
でも、これは普通じゃないと思って
医者に行ったら
学習障碍(ディスレクシア)だと。

この病気は
いまは知られるようになりましたが、
知識がないとかつての
私のような行為をしかねません。

(――辛いご体験でしたね。)

いじめもありましたから、
このままだと
不登校になるかもしれないと思って
担任の先生に相談しましたが、
そういう病気があること自体を
ご存じなかった。
日本中探しても、
そういう教育システムは
1つもありませんでした。

そこで障碍児教育が最も進んでいる
イギリスに6年生の長男を
留学させたんです。

幼子を留学させる私たち夫婦も
断腸の思いでしたが、
本人はもっと辛くて
寂しかったと思います。

しかし、自分には
ここしかないと思ったらしく
頑張り抜いて
ロンドン芸術大学を卒業し、
いまではロンドンファッション界で
出品の手伝いをするまでに
なっています。

能力を思う存分発揮して、
大変充実した生活をしているんです。

(――いろいろなご苦労を
これからの教育改革に
生かそうとされているのですね)

どのような子供も、
いまいる場で精いっぱい、
その力を発揮できる環境を
整えてあげるのは
私の大きな役目だと思っています。

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

「教科は国家の急務なり」
~戦後教育で失ったものを取り戻す~

下村博文
(文部科学大臣・
東京オリンピック担当国務大臣)

『致知』2013年6月号
特集「一灯照隅」より

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